現代日本では、転がっている死体などは、一生の間、見る人は滅多にいないだろう。
僕はペルーで二度見た。
ペルーに赴任した時、死体や、あるいは死体らしきを見ても決して警察や救急車に連絡してはいけないと言われていたので、
二度とも放置した。明らかに死体だとわかっていたので、自己嫌悪には陥らなかったが、もしかしたらまだ生きていたかも、
なんて思ったら、一生の悔いが残る。
ヒラメを釣りに行った。
釣り好きの友人から誘われたので、ヒラメならと、朝早くからでかけた。
釣り場を求めて、渚をジープで走る。カニが逃げ惑うが、かまわず踏みつぶす。
「ここがいいだろう」
と、停めたところに、波打ち際に死体が転がっていた。死体を波が洗っているようだ。
友人も傍にはいかず、少し離れて釣りを始めた。
こんなことは、日本では考えられない。
いまでも、白黒映画のように頭の中に映像で残っている。
これには、後日談があって、死体は友人の知り合いだったという。