気力が失せているようだ。
昔ならプッツンしただろうに、それがなくなってきた。
どうも、気力が失せたのではないか。
スーパーでバイトをしていたころ、といっても、5、6年程前だが、
商品棚に品出しをやっていた。
大量の商品を手際よく並べていくのだが、出している最中はお客が傍らを通っていく。
もちろん、普通に通過できる余裕があるが。
ある日、老人が来た。かなりのお年寄りだった。
いきなり、
「この、バカ野郎、客が通るだろう。バカ」
と、血相を変えて、そう、まさに怒りの表情で怒鳴った。
バイトとはいえ、働いている以上はとにかく、
「申し訳ありません」
と、まず言わなければならない。
このときは、意味が即座に分からなかったので、怒りもなかったが、
感心したのは、あんな歳とっても、怒る精神力というか、気力にだった。
昨日、仕事をしていると、通行人が近づいてきて、
「すいません、100円ください」
と、言ってきた。
見ると、いい青年、といっても30代半ばかくらいか、シャツの胸を開け、
素人がやったと思われる下手くそな刺青が一面に見えていた。モテソウなイケメン、そのうえ身長は180センチを超えるだろう。
下はゴム草履でチャラチャラした感じだったが、
なんとなく、最初の丁寧な「すみません」が気になったのだろうか、小銭入れを取り出して、彼の手にすべてをあげると、
800円ほどあった。
頭を下げて、立ち去って行った。
若いときは人生は長い、歳をとれば短い。
後ろ姿に、がんばれって、声をかけた。