Quantcast
Channel: 虚空を観じて
Viewing all articles
Browse latest Browse all 569

気力

$
0
0

気力が失せているようだ。

昔ならプッツンしただろうに、それがなくなってきた。

どうも、気力が失せたのではないか。

 

スーパーでバイトをしていたころ、といっても、5、6年程前だが、

商品棚に品出しをやっていた。

大量の商品を手際よく並べていくのだが、出している最中はお客が傍らを通っていく。

もちろん、普通に通過できる余裕があるが。

ある日、老人が来た。かなりのお年寄りだった。

いきなり、

「この、バカ野郎、客が通るだろう。バカ」

と、血相を変えて、そう、まさに怒りの表情で怒鳴った。

バイトとはいえ、働いている以上はとにかく、

「申し訳ありません」

と、まず言わなければならない。

このときは、意味が即座に分からなかったので、怒りもなかったが、

感心したのは、あんな歳とっても、怒る精神力というか、気力にだった。

 

昨日、仕事をしていると、通行人が近づいてきて、

「すいません、100円ください」

と、言ってきた。

見ると、いい青年、といっても30代半ばかくらいか、シャツの胸を開け、

素人がやったと思われる下手くそな刺青が一面に見えていた。モテソウなイケメン、そのうえ身長は180センチを超えるだろう。

下はゴム草履でチャラチャラした感じだったが、

なんとなく、最初の丁寧な「すみません」が気になったのだろうか、小銭入れを取り出して、彼の手にすべてをあげると、

800円ほどあった。

頭を下げて、立ち去って行った。


若いときは人生は長い、歳をとれば短い。

後ろ姿に、がんばれって、声をかけた。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 569

Trending Articles