いい方向に

オリンピックが始まる。

オリンピック選手の中で、一人でも、

「今回のオリンピックには参加しません」

と、理由など言わなくとも、明言してくれる日本人はいないか、

ひそかに願っている。



４０年ほど前、ペルーに赴任した。

当時のペルーは、飛行機を降りると、いきなり異様な臭いがしていた。

空港から市中にいくまで途中、高い建物はなかった。

「ずいぶんと遅れた国だな」

と思った。

ペルーに行く前に、ブラジル、アルゼンチンに行っているので、ペルーも似たようなものだろうと思っていたが、

両国に比べると、ペルーは本当に途上国なんだと思った。



生活している間に、ペルー人の特徴について、いろいろなことを知るようになったが、

それらはすべて、日本人からすれば、否定的な資質で、人のものは盗む、不誠実、嘘つきなどで、

厳しい生活環境のせいだろうと単純に思っていたが、

どうもそれだけではないと、思うようになった。



流行り病のせいで、ここ二年はペルーに行くことができないが、

これまで一年に二回は、ペルーやニューヨークの知り合いを訪ねている。

ペルー人は、否定的な人間性の人が多いが、ひとたび信用すると、本当に心を開いて歓迎してくれる。

そんな友人が、４０年前の赴任で、たくさんできた。

住めば都というが、確かにその通りだった。



４０年前に感じた異様な臭いは、今はしない。

当時のペルーは、料理の用の油は、魚からとったものを使っていた。それと、

大道商人が道路わきに所狭しと店を並べていた。公衆トイレなどはないから、当然その「辺り」でする。

異様な臭いは、油のニオイと、人間の排泄物が混じった臭いだった。

今のペルーは、道路は清掃されきれいで、大道商人は一定の地区に店を構えている。

雨が降らないので、街路樹は精彩を欠くが、



目に見える世界も、見えない世界も、

時ともに変化していく。

変化は、時に否定的な方向に、あるいは肯定的な方向に変化し続けていく。

ならば、いい方向に行きたいものだし、そうなるよう、日々の生活が大切なんだろうと思う。