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Channel: 虚空を観じて
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忘却の彼方

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子供のころ、田舎に住んでいた。

トイレは家の中にはなかった。外に設置されていた。家から出て20メートルは歩かなければならなかった。

雨の日は傘をさした、そのくらい遠かった。

トイレの横には枯れ葉、残飯などを棄てる場所があって、そこに堆肥が山のようになっていた。

住んでる土地は360坪あったから、家の前には、ビニールハウスや、梨の木、ミカンの木、やまももの木があった。

そのほか、タバコの葉を乾燥させるための施設、物置小屋などもあった。

土地の周囲は、竹藪が植えてあった。



住んでいる家は二階建てで、鍵などかけたことがなかった。

いつでも、だれでも、家の中に入ってこれた。

いまでも、田舎に行けば、同じだろうか、分からないが、

鍵をかけるのは、せいぜい、戸のツッカイ棒程度で、ほかには何もなかった。



長じて、その土地は切り売りし、小さな家を建てた。母親が一人住んでいたが、

やはり、鍵などはかけなかった。

都会に住んでいた自分は、キーを持ち歩いていた。

アメリカに駐在した先輩は、キーの束を携帯していたと言った。



今でも、女子であっても、一人で夜歩き回ることができる。

近所のコンビニだって、友人知人と飲み会に行っても、夜は一人で帰宅できる。

時々、ドロボーや引ったくり、あるいは強姦などニュースになるが、それでも、

まずまず、夜でも一人で歩ける。

電車には、小さな子供が大きなランドセルをしょって通学している。

日本ならではの光景だ。



日本列島開闢以来、未曽有の「外国人」がこの列島に住んでいる。

日本以外の外国人は育った環境が厳しかったのか、

おもてなし、信用、勤勉、正直、おもいやりなどからは、ほど遠い文化圏の人々だ。

例えば、「ドロボーは犯罪だから、ドロボーが悪い」というのは、日本人には共通の認識だが、

被害者の方が「悪い」と認識されるのが外国だろう。ドロボーにやられるほうがバカだというわけだ。

対処の仕方が分からない日本は、どこでも、だれでも、「空き」だらけで、盗み放題だろう。



その昔、信じられないかもしれないが、

日本は鍵のない日常が長く続いた時代があった。

なにものにも代えがたい「文化」だったが、いまでは、忘却の彼方にいってしまった。



その昔、

日本では女子が夜でも一人で歩けた時代があった。

小学生だけで学校に通った時代があった。

こんなことは孫には語りたくない、と願う。

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