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Channel: 虚空を観じて
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悲しいシーン

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仕事場の代々木にあるマンションは、黒い立派なマンションだ。

明治神宮の近くにある。

このマンションで清掃人兼管理人で働いている。

ゴミ置き場が、細い道路に面している。

警察が立てた立て看板には、この道路は狭いので、車での通行を遠慮してくれ、とあるが、一方通行でもなく、

ゴミ置き場の正面に、どうどうと有料駐車場がある。



この前、ゴミ置き場で作業をしていると、自分と変わらない年寄りが、

「この辺りでタバコを吸っているひとはいますか?」

と、訊いてきたので、結構いますよと、応えた。

みんな、申し訳なさそうに、こっそりと、背を丸めて吸っていますよ、

言いたかったが、それは言わなかった。

「いや~、通報があったので、見に来ました」

と、歩きたばこ禁止だったか、とにかくそんなユニフォームをきた、年寄りが言った。


なんとなく、悲しい一場面を見るような感じだった。



家の近所では、歩きタバコは滅多に見なくなった。

タバコは映画のシーンではよくつかわれたし、歌詞にも小説にも結構登場する。

「折れたタバコの吸い殻で・・・」

という歌詞からなにを想像するだろうか。


捨てたタバコを、靴でもみ消すシーンは、周囲に散らかったたくさんのタバコも一緒に映すと、

ああ、長い時間待っていたんだなと想像させる。


今、一番悲しい、やるせない、「シーン」は、

周囲に誰もいないところでこっそりタバコを吸う人を見かけたときと、

犬の散歩で、犬がした尿に、より尿を広げるであろう行為、

申し訳なさそうにペットボトルの水をかける「シーン」だ。

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