Quantcast
Channel: 虚空を観じて
Viewing all articles
Browse latest Browse all 569

ニオイは語る

$
0
0

もう40年近くも前の話だが、

ペルーに到着し飛行機を降り、

タラップに立ったその時、異様な臭いに嫌な感じがした。

臭いは初めて経験する臭いで、気分の悪くなるしろものだった。

後で知ったのだが、臭いは人間の尿、料理に使う油、身体を洗わない様々な臭いだった。

時々、電車にホームレスが乗車しているが、ホームレスの周囲が空いている。

あれは、長い間身体や髪の毛を洗わないと異様な、吐き気をおぼえる臭いがするからで、日本ではほんの時々だが、

ペルーではホームレスでなくとも、日常のにおいだった。

文明の香りや文化の薫りから、遠く離れた臭いだった。


虎ノ門ニュースで、門田さんが、帰還事業で北朝鮮に帰る人々様子を話してくれたが、とても印象的だった。

朝日新聞などで地上の楽園だと宣伝された北朝鮮に帰還できる喜びでいっぱいだった人々が、

乗船した瞬間、「うっと・・・」したという。

瞬時に、失敗したかも、と感じたそうだ。

つまり、船の中に染み付いたわずかな、文明、文化から遠く離れた異様な臭いに、気分が落ちこみ、

北朝鮮に到着したそのとき、出迎えの人々の洋服を見たら、

不安は、失敗の確信につながったという。

 


臭いは、例えば豚小屋は臭いが、臭いだけで、文明や文化、生活水準などと結びつかない。

それは、たぶん、豚小屋の単一のニオイだけで、ほかになにか異様な臭いがないからだろうと思う。


北朝鮮に帰還した人々は、おそらく、質の悪い洗濯石鹸、身体や髪の毛を洗わないニオイ、下水道の発達していないニオイ、などいろいろ混ざった、日本では経験したことのない文明文化、生活水準の低さを思わせる臭いを船の中に感じたのだろうと思う。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 569

Trending Articles