それなりに年齢を重ねると、昔の些細なことを、時に思い出す。
内容は、たいてい、後悔で、あんなこと言わなきゃよかった、ああしておけばよかった、悪いことしてしまった、などなど、
心の傷みたいなもので、どこかに引っかかっている。
心に傷を持たない人はいない、と何かの本で読んだ記憶があるが、まさにその通りだなって、おもう。
昔、お世話になった人が、こんなこと言っていた。仮にA氏としよう。
A氏は、それなりに、財を成した人で、人々の信頼も厚く、確か毎日新聞のインタビューも受けた、いわば地域の名士みたいな人だった。
そのA氏の知り合いにB氏がいた。
ある日、B氏は夫婦で、ばったり会ったA氏に向かって、深く謝罪したという。
A氏はまるで意味が分からず、とまどったという。
この話を聞いたとき、
「へ~~、そんなものかな」って思っていたが、
相手が理解できても、できなくても、謝罪したくなる気持ちって、この年になって、よくわかる。
ただ、なんとなくだが、A氏は謝罪を理解できなかった、といったが、ホントは、ずっと思っていたのではないか、と感じていた。
石を投げて悪かったと、時に思い出すことは、実は困難で、
投げられた側は、決して忘れないだろう。
本人に謝罪できれば、それが一番いいだろうが、たいてい、そんなことは無理だから、せめて、心の傷として、意識しておくのがいいのではないかと、
このごろ思う。